HY-PluginsのマルチサンプルスライサープラグインHY-Slicer2の使い方
何回かに分けて個人的に好きなHY-PluginsさんのHY-Slicer2の使い方記事を書いていきます。
最終的にはこの記事にまとめます。
HY-Slicer2は一般的なスライスサンプラーの様なMIDIダンプして鳴らすような使い方は出来ません。
大きなカテゴリだとスライサーなんですが、別物と考えた方が良いです。
HY-Slicer2は複数のサンプルをスライスして並べる事が出来、ステップシーケンサによるエフェクト機能が付いており、この二つの相乗効果により他には無いプラグインへと昇華しています。
購入方法
購入は以下で出来ます。
概要
この記事ではHY-Slicer2の基本的な機能、搭載エフェクトを軽く解説します。
文字ばかりなのでちょっとだけ音も用意しました
ギターのリフを再構築しただけなんですが、HY-Slicer2だとこういう事が簡単に出来て非常にクリエイティブです。
細かい話は使い方記事で書きますが、Grid SEQのグリッド毎にエフェクトやリバースの設定が入れられるので、かなり作り込みが出来ます。
同じ事をFL StudioのSlicexでやろうとすると外部エフェクトを使いつつオートメーションを使ってとかなり面倒です。
元の音はこんな感じです。
かなり雰囲気が変わっていると思います。
基本機能
普通のスライサーと異なる部分としてはスライサーが8基搭載されている点、シーケンサ内蔵でエフェクトが豊富な所です。
- Slicer8基
- 5つのSamper・Track
- スライス・サンプルをトリガーするGrid SEQ内蔵(グリッド・シーケンサー)
- Step FX(マルチエフェクト4基)
- Master FX(EQ、コンプレッサー、クリッパー、リミッター)
- サンプルブラウザ
搭載エフェクト
HY-Slicer2には「Track FX」、「Step FX」、「Mastere FX」が搭載されています。
それぞれに搭載されているエフェクトが異なります。
Track FX
Track FXには以下のエフェクトが搭載されています。
順番の入れ替えも出来ます。
- Tilt: サウンドの高域または低域を強調または抑制するイコライザーエフェクト。
- Compressor: 信号のピークレベルを制御するコンプレッサーエフェクト。
- Lofi: 信号を「汚す」効果を持つローファイエフェクト。
- Drive: オーバードライブ/ディストーション効果のドライブエフェクト。
Step FX
Step FXは4基あり17種類のエフェクトから1つずつ選択出来ます。
16個のグリッドかMIDIノートによりONとOFFを設定出来ます。
「Step FX」には以下の17種類のエフェクトが搭載されています。
- Delay: ディレイエフェクト。
- Chorus: コーラスエフェクト。
- Flanger: フランジャーエフェクト。
- Comb Filter: コームフィルターエフェクト。
- Tremolo/Panner: トレモロ/パンナーエフェクト。
- SVF: 状態変数フィルターエフェクト。
- Formant Filter: フォーマントフィルターエフェクト。
- Lofi: ローファイエフェクト。
- Fold Distortion: フォールドディストーションエフェクト。
- Pulse Modulation: パルス変調エフェクト。
- Ring Modulation: リング変調エフェクト。
- Frequency Shifter: 周波数シフターエフェクト。
- Reverb: リバーブエフェクト。
- Tape Stop: テープストップエフェクト。
- Repeat: リピートエフェクト。
- Reverse: リバースエフェクト。
- Distortion: ディストーションエフェクト。
Mastere FX
「Master FX」には以下の4種類のエフェクトが搭載されています。
- EQ: 3バンドのイコライザー。
- Compressor: 入力信号の音量を自動的に制御するコンプレッサー。
- Clip: ハード、ソフト、キュービック、サインの4種類のクリップタイプを持つクリップエフェクト。
- Limit: (マニュアルには記載が無いがバージョンアップで搭載されたと思われる)
この他にSend FXとして「Delay」と「Reverb」も搭載されています。
シグナルパス
「Slicer」は8機、「Grid SEQ」、「Samper」、「Track FX」は5つ、そして「Step FX」と「Master FX」と色々な単語が出てくる為、シグナルの経路を理解していないと混乱してしまいます。
以下がマニュアルにありました。
この流れを頭の中に入れておくと理解が速いです。
マニュアルから引用
各名称のGUI上の配置は以下の様な感じです。
上図の説明で「Slicer」とすべき所を「Sampler」となっていたので修正しました。
「Track FX」は各「Samper」の中にあります。
「Sampler」と「TrackFX」の使い方
「Sampler」と「TrackFX」の使い方を解説していきます。
「Sampler」1基に対して「Track FX」も1基固定です。
「Sampler」の使い方
エディットボタンを押すとこのパネルが表示され、サンプラーのパラメーターを編集することができます。
「Sampler」なんですが、実は非常に強力なんです。
基本機能を簡単に解説していきます。
まず「Slicer」と「Sampler」は別物なので注意して下さい。
「Slicer」は独立していて、外部の波形編集ソフトの様なイメージです。
「Sampler」でエディットするには鉛筆アイコンをクリックします。
(左下部の番号をクリックしてもエディット出来ます)
「Sampler」のMainエディットでは「PITCH/ETC」、「AMP」、「FILTER」をエディット出来ます。
「PITCH/ETC」
主に音の高さ、Pan、鳴る確率、リバース等の設定が出来ます。
パラメータは以下の通りです。
Level: サンプラーアンプのレベルを設定します。
Pan: ステレオのパン位置を調整
Chance: 0 %に設定すると、このトラックに割り当てられたスライスがトリガーされることはありません。
Reverse: スライスは逆再生されます。
Rvrs Prob: リバース・コントロールの確率を設定します。
Tune:トランスポーズをコントロール(+/- 12セミトーン)
Fine: デチューンをコントロール(±100セント)
「Chance」、「Rvrs Prob」はもう少し詳しく解説です。
「Chance」は確率を設定出来るパラメータで、50%だと半分の確率でトリガーされます。
「Rvrs Prob」はリバースの「Chance」パラメータでリバースする確率を決める事が出来ます。
動画にしてみました。
「Chance」のパラメータを低くすると鳴る確率が減り、鳴る時と鳴らない時があります。
また「Rvrs Prob」のパラメータを低くしていくとリバースする確率が減って時々しかリバースしなくなります。
「AMP」
音の時間軸に対する変化を設定します。
ADSRで言うところのAとDプラスHoldが設定出来ます。
あとは「S-Delay」と「S-Reverb」はセンドエフェクトへの送る量を設定出来ます。
パラメータは以下の通りです。
Attack: アンプ・エンベロープのアタック・タイムを設定します。
Hold: アンプ・エンベロープのホールド・タイムを設定
Decay: アンプ・エンベロープのディケイ・タイムを設定します。
S-Delay: ディレイ・エフェクトに送る信号の量を設定します。
S-Reverb:リバーブ・エフェクトに送る信号の量を設定する。
「FILTER」
フィルターの設定です。
タイプとカットオフとレゾナンス、ドライブの設定が出来ます。
パラメータは以下の通りです。
LP/BP/HP: フィルター・タイプを選択(ローパス、バンドパス、ハイパス)
Cutoff: フィルターのカットオフ周波数を設定
Reso: レゾナンス・レベルを設定
Drive: ドライブ量
Step Control
ここまでは基本機能なので特に特筆すべき点はないです。
しかしこの「Step Control」これが凄いんです。
マニュアルに殆ど触れられていませんが、非常に使い勝手がよく素晴らしいです。
「Step Control」の種類が11種類あります。
11種の内9種類は「Sampler」のパラメータとリンクしています。
(「Step Control」を使うと「Sampler」からこれらのパラメータは変更出来なくなります)
②Chance
③Reverse
④Tune
⑤Pan
⑥Filter
⑦Amp Env
⑧Send Delay
⑨Send Reverb
「Play FX」と「Roll」は独自したエフェクトで、ステップ毎にパラメータを持っています。
「Play FX」
GrossBeatの様なピッチをスクラッチするような効果が得られます。
「Roll」
「Step Control」を使うとステップシーケンサで時間軸でパラメータを変化させる事が出来ます。
動画を用意しました。
「TrackFX」の使い方
サンプラートラックごとに4つのエフェクトがあります。このパネルの左側にある水平のエフェクトラベルを上下にドラッグすることで、処理順序を変更できます。
「TrackFX」は「Sampler」のエディットと同じ画面の右側に表示されます。
「TrackFX」はTilt、Compressor、Lofi、Driveが搭載されています。
有効にするにはちょっと分かり辛いですが、各エフェクトの左側の電源アイコンを押すと有効になります。
各エフェクトの順番はドラッグで変更可能です。
Tilt
音の高低を強調または抑制するイコライザー・エフェクト。
パラメータは以下の通り。
Center: 中心周波数を設定
Tilt:傾きをコントロール
Q: Qファクター(カットオフ・スロープの形状)を設定します。
Compressor
このエフェクトは、入力信号のピークレベルをコントロールします。
Thresh: スレッショルド・レベルを設定します。コンプレッサーは信号レベルが を超えるとトリガーされます。
Ratio: レシオを設定します。
Attack: アタックタイムを設定します。
Release: リリース時間を設定します。
Gain: 出力ゲインを設定
Mix: 出力のミックス・バランスを調整
Makeup: メイクアップ オンにすると、出力信号のレベルが自動的に調整されます。
Lofi
この効果により、入力信号が汚れる。
SR: サンプリングレートの設定
Bit: ビット深度を設定
1/2/3: ビットリダクションのタイプを選択
Quality: ビットリダクションの品質を設定します。
Mix: ミックス 出力のミックス・バランスを調整
HP: ハイパス・フィルターのカットオフ周波数を設定する
LP: ローパスフィルターのカットオフ周波数を設定します。
Drive
オーバードライブ/ディストーション・エフェクト
Overdrive/Distortion/Saturation: ドライブタイプを選択
Drive:ドライブ・レベルを設定します。
Gain: ゲイン 出力ゲインを調整
Mix: 出力のミックス・バランスを調整
「Slicer」の使い方
「Slicer」はスライスするだけのツールでスライスしたら「Grid SEQ」にドラッグアンドドロップする事で「Sampler」の設定で鳴るようになります。
ポイントは「Slicer」からドラッグアンドドロップした時点で「Slicer」との関係は切れます。
ですから、後から「Slicer」でサンプルのスライスポイントを変更してもドラッグアンドドロップしたスライスに影響しません。
以下の動画ではスライスした後に「Grid SEQ」へドラッグアンドドロップして、スライスの範囲を変更しています。
変更した後、再生しても再生される範囲は変わりません。
ドラッグアンドドロップしたスライスを更新するとその変更した範囲が適用されます。
サンプルをスライスする方法
「Slicer」は8つあり、サンプルをドラッグアンドドロップすると勝手にスライスされます。
スライスは自動でスライスされる以外は手動で動かす以外のスライス方法はありません。
(ピーク検出精度調整してスライスする機能は無いです)
この辺が通常のスライス系プラグインとは仕様が異なる点です。
これはちょっと残念ではあるのですが、使い方がスライサーというより波形編集ソフトに近いので、個人的には気になりませんでした。
スライスポイントの移動はドラッグで出来ます。
動画を用意しました。(音無し)
スライスをプラビューする方法
スライスのプレビューはスライスをクリックするとプレビュー出来ます。
スライスポイントの追加、削除する方法
スライスポイントを追加する場合、マウスカーソルを波形上部の色が異なる部分に置くと白い点線が現れます。
白い点線をクリックするとその位置でスライスポイントが追加されます。
スライスポイントを削除する場合はスライスポイント上部の黒い部分を右クリックで削除出来ます。
ズーム、ズームアウトする方法(拡大縮小)
サンプルをズーム、ズームアウトする方法はサンプルの下部を上下にドラッグします。
上にドラッグするとズーム、下にドラッグするとズームアウトします。
左右にドラッグすると表示位置を左右に動かすことが出来ます。
動画を用意しました。
「Grid SEQ」の使い方
サンプラー/シーケンサーのトラックにスライスサンプルをアサインすることができます。グリッドステップごとに異なるスライスサンプルを設定することができます。そのため、1 トラックあたり最大 16 の異なるスライスを使用することができます。
「Track」に配置されたスライスは「Track」に紐づいた「Samper」の設定に基づいて鳴ります。
「Samper」の使い方はこちらの記事を参照して下さい。
以下の動画では「Samper」の設定を変更しています。
「Hold」時間を減らしてスライスの再生時間を短くし、「Filter」の「Cutoff」や「Reso」を変更してなる音の周波数帯を絞り、「Send Delay」や「Send Reverb」で特定のスライスだけディレイとリバーブを掛けています。
スライスの移動もドラッグアンドドロップで簡単に出来ます。
そしてその出力は「Track FX 」、設定がある場合は「Multi FX」を通り、最後に「Master FX」を通り出力されます。
この辺は次回の記事で解説します。
Trackの使い方
「Slicer」と「Grid SEQ」は独立しています。
「Sampler」と「Track」は対になっています。
イメージとしては「Slicer」は波形編集ソフトで波形をスライスして、「Grid SEQ」の「Track」にドラッグアンドドロップする感じです。
ですから、8つあるどの「Slicer」からでも、5つある「Grid SEQ」の「Track」へスライスをドラッグアンドドロップして配置することが出来ます。
動画を用意しました。
ドラッグアンドドロップしたスライスのエディット
ドラッグアンドドロップしたスライスは右クリックからカット、コピー、貼り付けが出来ます。
この辺はそのままなので解説を端折ります。
「Edit Start/End」は波形のスタートとエンドを調整出来るエディット画面が表示されます。
スライスをダブルクリックしても同じ動きです。
ズームも出来ます。
動画を用意しました。
スライスの複製はWinはCtrl + ドラッグ、MacはALT + ドラッグで出来ます。
こちらも動画を用意しました。
同じスライスを並べつつ最後のスライスはディレイを掛けるといった事が簡単に出来ます。
グリッドとシーケンサのコントロール
①Grid Shift/Clearが出来ます。
②Direction: シーケンスが走る方向を設定します。
③Speed: シーケンスの速度を設定します。
④Step size: シーケンスのステップサイズを設定します。
⑤Edit: サンプラーパラメーターのエディットパネルを開きます。
⑥Mute: トラックをミュートします。
⑦Solo: トラックをソロにし、他のトラックをミュートする
動画を用意しました。
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