この記事ではDan Worrallさんの動画「About Transient Designers」を日本語でまとめました。
途中動画で確認したいであろう部分は動画を頭出しをして掲載しています。
遭遇する可能性のある2種類のトランジェントプロセッサーについて解説し、その仕組み、違い、そしてなぜそれが重要なのかについて説明します。
トランジェント系プラグインの解説まとめ
2つの主要タイプに分類される
① クラシック・トランジェント・デザイナー型
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代表例:SPL Transient Designer(元祖ハードウェア)
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基本構造:アタック(Attack)とサステイン(Sustain)の2ノブ構成
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動作原理:主に**エンベロープ・フォロワー(追従フィルター)**を使用
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例:アタックを上げると、ドラムの打撃感(アタック成分)を強調
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サステインを下げるとキックやタムの残響を短く制御できる
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利点:
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ドラムマシン等の一定の信号に有効
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ゲートよりも簡単に減衰処理ができる
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欠点:
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入力にばらつきがあると、変に強調されたり不自然になることがある
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SPL製プラグインは、サステインを上げると歪みやすい
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✅ より良いクラシック型プラグイン例
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NI Transient Master:より自然な音質
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Softube Transient Shaper:バンド分割可能で柔軟性が高い
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Elysia Nvelope:スプリットバンド対応で高音質(UIがやや小さい)
🧠 クラシック型の構造を自作した例(FabFilter Saturnを使用)
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**Envelope Followers(複数)を用いた擬似トランジェント処理
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複数のフォロワーを逆位相や時間差で使うことで、アタックやサステインの強調・抑制を実現
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自作でもSPLより良い音が出ることもあり、「良いエンベロープ・フォロワー」が鍵
プリセットのダウンロード
動画のコメント欄にFabFilter Saturnを使って自作をしたプリセットが共有されています。
② トランジェント分離型(Quantum型)
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基本構造:信号をトランジェントと残りのボディに分割して別々に処理
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トランジェントだけをソロ再生可能
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各セクションに独立したFX(エフェクト)を適用できる
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利点:
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トランジェントだけにリバーブ、EQ、ディストーションなどをかけられる
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不安定な入力に対して安定した処理が可能
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欠点:
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トランジェント検出の精度が音質に大きく影響
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複雑な信号では誤検出やクリックノイズのリスクがある
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🔧 その他のハイブリッド的プラグイン
🧪 TBTech Trinity Shaper
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Attack, Sustainに加え、Bodyパラメーターを搭載
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ソロ機能ありだが、Quantumのように完全に分離しているわけではなさそう
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3つのセクションを別々にソロ再生して合成しても、元の音には戻らない=内部分離していない
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高度な「エンベロープ・フォロワー構造」を拡張した進化型と推測
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マルチバンド使用時は最大24エンベロープ・フォロワーが走る可能性も
🎯 まとめ:用途とおすすめ
種類 | 用途 | 長所 | 欠点 | 代表的なプラグイン |
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クラシック型 | ミックスでの簡易処理 | シンプル、即効性、汎用性 | 信号のばらつきに弱い | Transient Master, Elysia Nvelope, Softube Transient Shaper |
分離型(Quantum型) | 精密処理、サウンドデザイン | トランジェントのみに精密な処理 | 誤認識やアーティファクトのリスク | Wavesfactory Quantum |
ハイブリッド型(Trinity Shaper) | 柔軟な音作り | 多機能・多段階処理 | 実装が不明で使いこなしに習熟必要 | Trinity Shaper |
🧩 結論:
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クラシック型のトランジェントデザイナーは「必須ツール」。シンプルな問題を素早く解決できる。
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Quantum型などは「Nice-to-Have(あると便利)」。音作りや実験的処理に向くが、ミックスの基本ではない。
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